FIP
FIPの治療中、隔離は必要ですか?
FIP治療中の猫は、原則として隔離する必要はありません。ただし、FIPVの水平伝播リスクはゼロではなく、Ⅱ型FIPVでは例外も考えられます。本記事では、FECVとFIPVの違い、隔離の必要性、治療環境の考え方を整理します。

はじめに
FIPの治療中、猫を隔離する必要はないということは、多くの方がご存じだと思います。この考え方には、私たちもおおむね同意しています。ただ、その理由を「FECVはほかの猫にうつるけれど、FIPVはうつらないから」と説明するのは、少し一面的です。
FECVとFIPVの感染細胞の違い
前の記事でも説明したように、FECVが感染するのは腸粘膜の細胞ですが、変異後のFIPVが感染するのはマクロファージです。
この変異は、腸管の粘膜固有層や局所のリンパ組織に存在するマクロファージの内部で起こります。
FIPVが糞口感染を起こしにくい理由
そうなると、FIPVに変異したウイルスは腸粘膜を離れ、感染したマクロファージとともに血流に乗って、ほかの部位へと移動していきます。
FIPVが糞便中に排出されなければ、糞口感染は起こりません。
FIPVに感染した猫の大多数が糞便中に排出しているのは、変異していないFECVだけです。
発症後の隔離が大きな意味を持ちにくい理由
一方、FECVは致死的なウイルスではなく、多くの場合、症状さえ現れません。しかも、猫の多くがこのウイルスを保有しています。そのため、FIPを発症してから隔離しても、実際にはあまり大きな意味がないのです。
Ⅱ型FIPVで考慮すべき例外
ただ、前の記事『FIPの本質(基礎編)』でも触れたように、アジアではFIPV感染の約25%をⅡ型が占めます。Ⅱ型FIPVは、猫コロナウイルスと犬コロナウイルス(CCoV)の組換えによって生じたもので、スパイクタンパク質の変化により、腸上皮細胞、さらには気道の細胞にも感染する能力を獲得しています。
また、ウイルス量が非常に多くなることもあるため、糞便とともに、あるいは気道から体外に排出され、水平伝播を起こす可能性があります。
こうしたケースは非常にまれですが、まったくないとは言い切れません。
安心できる治療環境とリスク管理
FIPを発症した猫からほかの猫へ水平伝播する確率は、確かに低いものです。それを踏まえると、慣れ親しんだ快適な環境で安心して治療を続けることは、ストレスを減らし、回復を支えるうえでも、ある程度役立つ可能性があります。
まとめ
ただし、FIPを「絶対に水平伝播しない病気」と決めつけるべきではありません。確率は低くても、その潜在的な伝播リスクを完全に無視してよいわけではないのです。
ARTICLE INFORMATION
執筆・監修/公開情報
本記事の執筆・監修者と公開履歴
CREDITS
01 / WRITER
猫博士研究チーム
02 / REVIEW
Li Yun 博士
獣医師
PUBLICATION
公開日
2025年9月15日最終更新
2025年9月23日
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